井上弘久 朗読演劇|DVD 変身
★2015年4月3日~5日にパラボリカ・ビスで行なわれた、井上弘久 朗読演劇『変身』がDVDになりました!
朗読●井上弘久
音楽●𠮷田水子(コントラバス奏者)
照明●岡野昌代
ドラマトゥルク●山田真実
企画●今野裕一(夜想)+金宗代
撮影●赤羽卓美
楽譜●𠮷田水子
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プロフィール
井上弘久(いのうえ・ひろひさ)
朗読演劇家、俳優、演出家。1952年 東京生まれ。
1979ー88年 太田省吾主宰の転形劇場に所属。
「水の駅」「小町風伝」「→(やじるし)」など出演。1990ー11年 演劇集団Uフィールドを主宰。
「孤独な老婦人に気をつけて」(マティ・ヴィスニユック)、「女中たち」(ジャン・ジュネ)、「太田省吾の世界」など演出。
冒頭から最後の一行まで、地の文も会話もすべてセリフと化してしまう、朗読演劇という表現スタイルを確立し、
2014年 チャールズ・ブコウスキー没後20年連続企画 朗読演劇『町いちばんの美女』。
金子雄生、中原昌也、大谷能生、齋藤ネコらと共演。
2015年4月、今野裕一演出のもと、カフカ「変身」に挑戦し、約3万字を暗唱する驚異の一人劇を見事に演じきった。
6月、ブコウスキー朗読演劇「町でいちばんの美女 2015」。
𠮷田水子(よしだ みなこ)
東京藝術大学器楽科(コントラバス)卒。桐朋学園大学音楽学部研究科卒。
1990年代から、自身のプロデュースによる音楽劇「アベラールとエロイーズ」、オーストラリアのアボリジニを題材にしたコントラバス2台(または3台)による「ソングライン」、創作バレエ「人魚姫」をプロデュース及び出演。
ピアノ・パーカッション・コントラバス女性3人によるワールドミュージックグループCanBeDoを結成。
1996年から岩崎浤之とタンゴコスモスのメンバーとなり、多数の演奏会、CD録音に参加。
1999年、NPOの依頼でネパールで鍵盤ハーモニカの指導に赴く。
それ以降ネパールの歌をネパール語と日本語訳で歌い続けている。
2001年からギターの竹内永和と毎月ライブを行いあらゆるジャンルのレパートリーを増やし続け、
現在はラテン、シャンソン、タンゴ、映画音楽、中世ルネサンスなど。
クラシックのソリストとしても活動しており、2006年・2007年、パントマイムの山本さくらと共演。
2010年、タンゴ歌手の西澤守をフィーチャーした作品「タンゴの歴史」の脚本・構成・演出。
2011年夏、三重県にあるパラミタミュージアム内の池田満寿夫氏のコーナーにて竹内と演奏。
2013年7月には近江楽堂にて、長岡聡季(ビオラ)と、オーケストラをバックにソロを務め、好評を博した。
2014年より井上弘久氏の朗読演劇(ブコウスキー作『1ドルと20セント』、カフカ作『変身』等)の音楽を担当し演奏で共演。
クラシックのソロから、室内楽、ピッチカート奏法からタンゴ奏法まで幅広いジャンルで活動。
躍動感溢れるリズムに、低音から高音域までを駆使した伸びやかな演奏が特徴。
冒頭から最後の一行まで、地の文も会話もすべてセリフと化してしまう、
熱量のいるこのパフォーマンスは、朗読演劇という分野の正統なはじまりとなるだろう。
この成功は作者の生の経験を引きうけられる、若さを通りこした役者だからこそだが。
——青野聰(小説家)
舞台人は、役者にしてもダンサーにしても饒舌な身体を持っている。
もちろん役者は舌自体が饒舌な場合が多い。
井上弘久がかつて所属した転形劇場はその俳優の饒舌さをストイックに押さえた。
それでも役者たちは無言のまま饒舌に演じていた。その葛藤が面白かった。
転形劇場と太田省吾には縁があっていろいろな形で関係したが、
その時に井上弘久は居なかった。
だから、ブコウスキーの朗読でしか役者・井上弘久を知らない。
朗読を見て、ブコウスキーを初見で読んで泣いたと聞いて、
カフカの『変身』を朗読してもらいたいと強く願った。
井上弘久はおそらく饒舌な役者ではないだろう。
役者の饒舌というのは、板の上に自分が居る/あるということを根底において成立している。
井上弘久は役者としての存在感以上に、ここまでの生き様を感じさせる人間としての存在感をもっている。ブコウスキーもそうやって文学をした。
井上もそうやって舞台の上に立ってきたのだろう。泣くときはまず男として、人間として泣く、演じるのはそれからだ。
カフカの『変身』は饒舌な身体によって演じられ続けた。
その結果、カフカからだいぶ遠いところにいってしまった。
今、カフカに立ち返り、隠されてしまった『変身』の魅力を新たに取り戻すことができるのは、井上弘久のような生き様に根ざした身体だろう。
——今野裕一(夜想編集長)
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