「幻鳥譚」中川多理 人形展
中川多理の創る人形たちを見て僕が、ごく個人的にいつも感じるのは、
あらかじめ“生”の呪縛から解放された存在の“安らぎ”である。
“生”は“肉”と云い換えても良いかもしれない。
よけいな“肉”が削ぎ落とされた滑らかな皮膚。
それがところどころで骨と融け合って一体化したり、風化して剥き出しの骨だけになったりもしながら、
結果として本来“死”の側に属するものたちの空洞に、あるはずのない仄かな“生”が宿る。
このありようが実に美しく蠱惑的で、なおかつ不思議な“安らぎ”を見る者にもたらす。―ような気がするのだ。
そんな中川多理の少女たちと伝説の幻鳥の共演が、今回の個展では見られるという。
そこにどんな“声”を聴き、どんな“物語”を見出すことができるか。―小説家の端くれとしては楽しみでならない。
(綾辻行人)
化鳥棲む山荘は、陵に抱かれた
「こもりく」は、懐深い山に囲まれた場所の意で万葉集の枕詞。例えば、
山荘は、まさに
天智天皇は見えぬ気配の方であったようで、
歌に詠まれた。山科のあたりを彷徨したが姿が見えず、ただ薫りだけが残っていたという天智天皇の逸話もある。
ここ山科、春秋山荘のある安朱の籠り國は、気配の場所。
見る者、佇む者たちが、自らに潜在させた魂の形と出会う処なのだ。
中川多理は、山科安朱・春秋山荘に潜在していた彷徨する魂たち(それは生き物と言っても良いかもしれない)と、邂逅してひとがたに化身させる。
どこかに骨の貌が残っている反魂化身。そんな予想を立ててみるが、
山荘に置かれて始めて息をする人形たちだから、今は、気配を想像するしかない。
形あるものが消滅しがちなこの世、春秋山荘で中川多理の人形たちに出会うも一期一会と思し召せ。ぜひに山にお上がり下さい。
(今野裕一)
Special Event
■『田舎医者Paris ver.』倉知可英×中川多理
パリ公演のためにつくられた作品を、一夜限り上演。人形も新作をお披露目!
ダンス:倉知可英
人形:中川多理
9月4日[日]17:00~
料金:前売1500円/当日2000円
ご予約はこちらから>>
■トークイベント/綾辻行人×中川多理
9月11日[日] start17:00
出演:綾辻行人、中川多理
司会:今野裕一
料金:前売1500円/当日2000円
ご予約はこちらから>>
■人形茶会記(にんぎょうさかいき)
一期一会に出会う人、相まみえる人とひとがた。
茶会の日時・場所・道具建て・参加者などを記したものを茶会記という。
茶会に参加した人名を記す場合もある。
古香庵でお客様を迎えるのは、中川多理、江村あるめの新作人形。
人形は縁あると人に招かれてもらわれていく。
会う時は一期一会かもしれず、その刹那を楽としながら、快に遊ぶ京のひととき。
中川多理、江村あるめ/人形(初披露)
相場るい児/茶道具(髑髏・妖怪)
※作家在庵の場合もあり
9月22日[木・祝] start13:00/start15:00
9月25日[日] start13:00/start15:00
各回30分前開場
会費:3,800円 ※茶室古香庵での特別人形展、お茶とお菓子、細見美術館特別展「琳派展18 京の琳派」鑑賞券を含む、小さなおみやげ付き
定員:各回15人(要予約、先着順)
会場:細見美術館 茶室 古香庵(京都市左京区岡崎最勝寺町6-3)
交通:京都市営地下鉄「東山」駅徒歩7分
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お問い合わせ▶︎パラボリカ・ビス:03-5835-1180
Facebook 京都・山科 春秋山荘ページ
https://www.facebook.com/syunju.sanso/
Facebook イベントページ(9/22、25)
https://www.facebook.com/events/1765665553645165/
「幻鳥譚」中川多理 人形展
2016年9月9日[金]~9月25日[日]
会期中の金・土・日・祝のみ 金| 12:00~20:00 土日祝| 12:00~19:00
入場料:500円
会場:京都・山科 春秋山荘
京都府京都市山科区安朱稲荷山町6map
TEL:075-501-1989(金12:00~20:00、土日祝12:00~19:00)
★駐車場がございます。お車でのご来場もお待ちしております。
アクセス
● JR琵琶湖線・湖西線/山科駅 徒歩20分
● 京都市営地下鉄東西線/山科駅 徒歩23分
● 京阪電気鉄道京津線/京阪山科駅 徒歩22分