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『海の闇、月の影』『天は赤い河のほとり』篠原千絵

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理想のコレクター

恋月姫さんと篠原千絵さんの対談がパラボリカビスで行われた。

篠原さんは『海の闇、月の影』 『天は赤い河のほとり』『闇のパープル・アイ』などの少女コミックの作家さん。
二度も小学館漫画賞を受賞している。

ストーリー展開に独特の力量があって、どうまとめるんだろうか? どう展開するんだろうかという難しい局面で、例えば伝書鳩が出てきて、パラレルに走っていた話が、一気に統合され、またそこから拡がっていくというような、緩急、幅の広さの自在さに長けている。超能力や不可思議な力がでてくるが、物語の展開に利用されていずに、最小限度、ストイックに使われていて読みやすく、楽しみやすい。物語の筋に妙味がある。

その篠原さんは、恋月姫さんの人形を多数コレクションしている。
そのコレクターならではのお話をいろいろしていただいた。そして恋月姫さんとの対話が面白かった。人形作家さんの側からの感覚と、コレクターさんの感覚と、微妙に異っていて、シンクロしている。

篠原千絵さんは、恋月姫さんのお人形を次の世代に伝えるために無垢のままで持っていたい、だから名前もつけていないとおっしゃっていた。

コレクターさんは、所有しているものに対して、自由を持っているけれど、例えば、ゴッホを125億円で、ルノアールの119億円で落札した日本製紙の齊藤 了英が「俺が死んだらゴッホとルノアールの絵も一緒に荼毘に伏してくれ」と発言して欧米からバッシングを受けたように、なんでも、どうにでも出来るというものではない。文化遺産として伝える義務ももっているのだ。預かっている、伝えるという感覚をどこかにもっている必要がある。というか、そういうものだ。コレクションというのは相応しいところにあるのが、幸せというものだ。

篠原さんは会場にいても、本当に恋月姫さんの人形が好きだ、という感覚が伝わってくる。まず好き、というのがコレクターのはじまりだろう。そいういう意味でも篠原千絵さんは、理想の人形コレクターの一人だと思う。お話を聞けて良かった。

update2008/05/11