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嗤う伊右衛門 京極夏彦
石野竜三さんの朗読が11月23日から26日までパラボリカ・ビスで行われるのだが
四谷怪談的なものをと選定中。
で、資料読みに耽る毎日。 おそらく『四谷雑談集』を読むことになるのだろうが
その経過で『嗤う伊右衛門』京極夏彦を読破。
現存作家を余り読まないので、京極夏彦もまったくの未読だった。
だった、が、読んで見て、素晴らしい!
『幻想文学講義』で読んだ、京極夏彦のインタビューが、かなり気にかかるものだったので、読んだしだい。
幻想を描くにあたって、現実から幻想の方へ上手にカットインする、あるいはすらりと入り込むというのが、通常の手法なのだが、京極夏彦は、現実の方で幻想を描いている。これは大変な力量で、伊右衛門も、岩も、梅もすべてこちらの側で、人間として蠢いている。ラストに現実が妖かしに侵犯されるのも鮮やか、そしてアディクションの様な、DVのような恋愛の機微を、描き込んでいて、そうだよな、ちょっとずれると運命はこうなっていくんだよな……という現代的な同感もある。歌舞伎の戸板もちゃんと使うし、原点もさらりと上手に挿入するし、ちょっと参ったなぁという、幻想小説だ。
update2012/09/14