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痕跡

何の上を歩いたのか
自分の足の痕跡が
意識のなかに残っている
それが何処なのか
何時なのか
もう思いだせない

人形を製作している
あの薄暗い
密室の床に
散らばった石膏の粉
そこにつけてしまった
足跡だったかもしれない

そこにいた
作りかけの人形は
もう形になっただろうか
それとも
壊されて
芥のようになって
床に散らばっているのだろうか

update2006/03/10

column

壊れたチョコレートのほうが

壊れたチョコレートの方が
効力があるということは
ないだろうかな……。?

親しい現代美術の作家さんからとどいた
チョコレートには
見事なひびが入っていたが
余りに見事なので
感心した。

食べたら
とても美味しかった。

これから仕事をするかもしれないので
ちょっと不思議な感じの
縁起良さをかんじた。

update2006/02/17

column

ちょっと壊れた何かを

ちょっと壊れた何かを
抱えながら生きている。

でも
何かが動いているという
実感もあるので
かろうじてそちらの方に向かって
動いていく

レシピがないと
動けない

でも
ふと
以前のように
本能で動いてみても
良いのではとも思う

設計図を描いても
そのままは動かないものだから

update2006/01/18

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すっと抜けない何か

すっと抜けない何かを
抱えている
何かあるとぐずつく感覚だ。
それが自動的に起きるから困ってしまうし
扱いかねる。
自分を扱いかねるところに
導く
すっと抜けない何か。

感覚のぶれの
ローリングからの
影響はだいぶ解消できるようになったが
まだまだふっと
貌を出して
僕を悪戯して消えていく。

update2006/01/14

column

見える

舞台を見ていて
踊り手の思っていることが見えることがある
それを文章にして
踊り手に驚かれたことがある
突然、電話がかかってきた
どうして私のあの時の頭の中が分かったのかと……。
それは大野一雄さんだった。

ふっと見えなくなることもある
泉鏡花の「日本橋」を読んでいて
風景が浮かんでこなくなった
嗚呼。

僕は昏い路地を探して
彷徨しだした。
路地の昏さに身体が馴染めば
また鏡花も還ってくるかもしれない

update2006/01/12

column

踏みだした足

踏みだされたものは
たしかに
ポワントでごつごつの足だったのだが
それは
小さく手の中に入りそうだった

光のなかに
踏み出された足は
軌跡を越えた
射し込み
のような煌めきがあった

その足は
いま荼毘にふされて
灰色の粉になっていることだろう

帰国した瞬間にだけ見せた
閃光のようなダンスを
私は決して忘れない。

あなたのそばで
その足を見ていたかったから
私は
踊りの世界に入ったのだ。

レダよ
鎮かにねむれ
あなたの生きるのに
この地は余りにも湿り気が多かった。

本来は
追悼の舞台を催したいのだが
あなたの代わりを踊るダンサーがいない

update2005/12/21

column

闇が深いと

爬虫類の膚を見ると
ぞくっとするのは
遺伝子のせいだろう
血を見て顔を背けたくなるのも
生物的に自分を守る本能なんだろう

アディクションが起きた時に
身体を動かすのは
理性ではない
あっ
と思った時はもう身体は動いてしまっている
ものだ。

耽美は
その生物学的反応を越えて
美に
身体をたらりと
委せる美学なのではないだろうか

身体をきりりと鍛えれば
生物学的反応から逃れて
自分の腹を
切ったりもできるかもしれない
それも
美しいと思いながら
うっとりとしながら……。

そのとき
理性と遺伝子は
叛乱されたことに
嫉妬するのだろうか

身体を
深く見ていくと
おそらく底には
計り知れない闇が
発祥するのだろう。

update2005/12/06