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2008/12/21

中井英夫の庭で Ⅰ

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ブランデー・グラスを舐めさせられているうちに
ふと

隣に坐った中井英夫さんの
妖なる雰囲気に思わず畏れをなし
失礼することを告げると

本当に無粋な奴だなと
言いながら

設定を命じた。
これから押し入れの中にある
蓄音機でシャンソンをかけるから
庭で一番を聞いてから、振り返らず木戸から去れ。
と。

庭は満開の白い薔薇で埋まっていた。
頭蓋が痺れるような夜
家は煌々と灯が伴されて庭の白を照らしていた。

言われるとおり
シャンソンを聴いて僕は中井英夫邸を後にした。

という話を
東雅夫さんと建石修志さんと話しているときに
ふと思い当たった。
これは『虚無の供物』の設定なのだと。
隣の部屋でなっていたシャンソン…。
白い庭…。

中井英夫さんは初対面の僕に『虚無の供物』で遊んでくれたのだ。
今、20年以上たって気がついた。
しかも司会をしている最中に。

『虚無への供物』はどうですか?
と東さんに聞かれて我に帰って、探偵小説をカットアップして、現在を織りなすという
高踏技を駆使して、それで文学として成立しようとした
実験文学だと思いますし
見事にでき上がっていると思いますと
答えた。


中井英夫Ⅱ

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2008/12/20

中井英夫 Ⅱ

中井英夫には『模倣のすすめ』という一文があって
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原作を翻案する感覚は
あまりに日本人的な嗜好と、わかちがたくからみ合っているこが容易に理解できよう。

と、短歌や小説の翻案を日本的な文学の土壌、血的な土壌に寄っていることを
述べている。

三島由紀夫は、日本の大衆小説の殆どは外国ダネだから、盗むなんてのは不思議ではない。まァ一流文学は外国文学を“下敷き”にして二流文学は盗むということだ。

と、言っている。

中井英夫の言いたかったことは、この連綿と続いている日本の血に流れているかのようなDNAを見極めないで、盗作が悪いということは、同じ穴の狢だ、ということだ。

中井英夫は生涯一貫してこの姿勢を貫いている。
寺山修司が登場した時に、俳句からの盗作を指摘されて集中砲火を浴びた時も、短歌という制度の中で飼ってきた翻案ということを論じないで、ただ寺山修司の盗作を非難するのはおかしいという態度をとった。

ここには日本文学の大きな問題が横たわっている。

中井英夫の『虚無への供物』はそのことの逞しい実験にもなっている。

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2008/12/08

表層の隙間に…

発祥するものは

2時間が過ぎても
まだ話は尽きない。およそ三分の一くらいだろうか聞きたかった予定量の…。珍しい。別に建石修志さんが話し好きというわけではない。淡々と2時間。鉛筆から混合技法のあたりで時間が尽きた。またどこかでぜひお聞きしたい。

絵の表層性の中で、たとえばパースを使わないで絵を成立させる感覚。それは表層のディテールだけでもない…。トーンと形の狭間にある何か。絵画の表面性とは理屈では分らないものかもしれない。見る(目)、感じる(脳)、描く(手)というトライアングルの中で生成する絵画。絵を生成させているのは頭ではないだろう。

大学院生の時にすでに時代の寵児であった建石修志。『凍結するアリス』の鉛筆ドローィングは、寺山修司、中井英夫たちに認められて、天井桟敷のポスターや中井英夫の本の装幀を手がけていた建石修志。それは30年以上前のこと…。そして今も建石修志は少年とオブジェを描き続けている。

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2008/12/04

建石修志展 「表層の浮かぶ夢」 オープン

70点を越えてまだ作品が搬入されている

今日も徹夜で飾り付けになるだろう。
広い3会場が作品で一杯になっている。

箱の作品もキュート。
画家の作る箱作品はまたトーンが違う。

暗号が絵に忍んでいる。
読み解けるか?
無理だろうな…。

羊皮紙や皮に描かれた鉛筆のドローィング。
時代が移ろって
流れている。

そして今、
新作はまた新たな建石修志の方向性をとらえている。

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2008/11/30

建石修志展 「表層の浮かぶ夢」

70点近い作品と

建石さんが装幀した本が運び込まれた。

+
セッティング案を相談しながら手を止めて話をする。
僕と建石さんは文化圏が微妙に異るところにいたので昔の話でもとても新鮮だ。
土方巽、寺山修司、笠井叡、中井英夫。
そして絵の話。

混合技法がまだなかった頃。
ペヨトル工房は川口起美雄、高橋常政を講師に、東京芸大の佐藤一郎 坂本一道 田口安男をゲストにセミナーを行った。
ここから混合技法は日本に広まっていったのだと思うが、
建石修志の参加は
まだもう少し先のことで、その頃には僕はセミナーの運営を止めてしまっていたので交流はない。

混合技法は、透過層と不透明な層との組み合わせという面もあるし
油彩の多彩さを引き出すテンペラの白という考え方もある。
あの頃は、直線的に理解していたが
いまさまざまな方法で混合技法が定着しているのを見ると隔世の感がある。

技法が使い込まれると
そこに感覚を反映できる雲のような隙間が生まれる。
予想もしなかった表現のユニークさが生成する。
微妙な破調をともなって。

日本の混合技法はもうそんなところにまで来てるのではなかろうか。


++
そして建石修志は鉛筆から始った人。

鉛筆の技法が初めて手に来た時の感覚…。
来るというのは、いろいろな時に起きるが
その話には典型がない。
だから作家の人の出来たときの話はとてもぐっとくる。

建石さんの鉛筆画は乳白色の色がある。
それも鉛筆で描かれている。
凄いな…。

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2008/11/28

嘘つき大統領と放言首相

放言に放言を重ねる首相だけど

傷つけたらあやまるけど…
なんていう撤回の仕方自体が本音まるだしだ。顔が謝ってないよな。口とんがらかせて…。子供っぽい。
会見の後で神楽坂の彼女に『ぼくちゃんまたいじめられちゃったの。』って赤ちゃん言葉で電話しているかもしれない。

嘘で固めたイラク戦争のサポートの名の元にインド洋で油を垂れ流す法案を
党利で賛成したり反対したりする民主党とともに必死で通そうとしている麻生首相。国は緊急時なんですぞ。もう少し国が壊れなくて済むような方向で政治にだずさわって欲しいものだ。

ブッシュは、嘘をついてイラクを侵略した。
アルカイダは壊滅させるのが難しいから、楽なイラクにしよっと。ブッシュはそう言ったのだ。アルカイダとフセインが関係あるというのは、現在に至るまで証明されていない。アフガンから戦力をイラクに廻した。追いつめられていたアルカイダは息を吹き返した。そしてパキスタンで活動を開始した。インドの大規模テロもアメリカのアルカイダ放置と関係があるだろう。アルカイダを壊滅させてしまえば良かったという話ではなく、中途半端ないじり方をしたら怒るでしょうということだ。それは大国の身勝手、ブッシュの気まぐれなのだから。ブッシュはもともとイラクを叩きたかったのだ。大統領になったときから。この嘘つき度合は、戦後弾劾されつづけたヒットラー以上の悪質さだ。嘘でどれだけの人が死んで、経済がどれだけ疲弊したのか。ブッシュの妄想が引き起こしたリセッションが世界を巡っている。

イラクからは大量破壊兵器は出てこなかったし、核開発もしていなかった。資源のない北朝鮮が核開発をしても国を攻めないが、イラクは実際に作ってもいないのに攻めた。そこには油があるからだ。でも上手に油は手に入れられなかった。それが油の高騰につながった。油の高騰は、サブプライムの崩壊で行き先を失った金融資金が油に向ったからだということもあるが、油を欲しがって失敗したアメリカの動きに大きく関連している。

油の値段を下げるのに投機マネーを規制してもコントロールは利かない。値段を下げるには使用量が減るという観測が蔓延することが必要だ。そうしたら投機マネーは自動的に手を引く。あるいは金融資金の供給量が減れば油の値段は落ちる。いま、世界が目の前にしている不況→恐慌への状況は、まさに油の値段を下げる要素でできている。油の値段は下がったが、それはちょっと前の値段であって暴落はしていない。金融のお金が回っている分、値上がりしていたのだ。それをとっぱらってみるとこんな感じなのかもしれない。金融の資金、いわゆる実態経済でない部分を取り払った世界が、いま、見えている不況の世界なのかもしれない。えー、そうなら嫌だなぁ。

嘘つき大統領の経済政策は、金融を膨らませ切った状態を作り出した。そしてそれを破裂させる軍事行動までしてくれた。それにつき合っている日本もいい加減、お人よし過ぎる。それにしてもチェック機能がなさすぎる。切れ味のある、影響力のある書き手はいないものだろうか。

アメリカは腐っているが、最近、ノーベル賞をとったポール・クルーグマンは面白い。この人は経済学者だが、現在時でコラムを書いている。その分析が的確で、ブッシュの嘘を想像しながら書いている。自分で言っているが、危険極まりない書きっぷりだと。終わった後に書いたり分析したりするのは簡単だ。結論から自説を導けば良いのだから。現在時で書くのが難しい。勇気がいる。正確さがいる。90%以上がイラク戦争を支持しているときに、クルーグマンは、『嘘つき大統領のアブない最終目標』を書いている。イラク陥落の日にアメリカで『?』を投げ掛けているのだ。そしてそれは今読んでもあっている。

クルーグマンは予想屋さんではないが、現在分析が予知力をもっている。
ずいぶん前に世界恐慌がくると言っている。
経済論は必ず政治と関係する。そのなかで比較的政治色の少ないクルーグマンだ。結果としてはブッシュを非難しつづけているけど。でも別に民主党と言うわけではなく、経済政策がまずいでしょうと言っていることから派生している政治手法への批判なのだ。

さて、日本の経済政策。え、そんなものあるのかい。というくらいなさけない。金融国家創生をうたっていた竹中平蔵、6ヶ月前くらいにアメリカのサブプライム処理は早いですよ。日本をお手本にしているから、いまもう処理は終わりつつあると思いますよと言っていたけど、あたらなさすぎる。グリーンスパンと同類だからしかたがないけど。日本に現在時に機能している経済学者っているのだろうか。そんな人がいたらちょっと本を読んで見たい。


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2008/11/25

人が居なくなった時に

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残った人たちが

何かを感じられるかどうか。

寺山修司さんは今だに側に居るような気もする。
親しい感じだ。
もちろんどれだけ親しかったかという距離もあるだろうが。
でも父親には距離がある。
不思議な距離だ。

直接には知らない、でもTVで知っている人の
今は他界した人の書斎に入った。
強い生存感がある。もちろん他界されてから余り時間が立っていないせいもあるけれど。
仕事がずれている為でもあるが逆に好奇心が刺激されることもある。

澁澤龍彦さんの書斎はある種理解が出来た。そして同じ北鎌倉の匂いがした。
この書斎に漂っている匂いは別のものだ。

その人が生きている時に現世に見ていたものは分らないし興味がない。
その人が彼方に見ていたもの、深く根ざしていたものに興味がある。


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2008/11/21

おしゃべりしていても

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上手に入れるのが

イタリア人じゃないですか。

あ、うまい。と反応したらウインクしてそんなことを言った店長さん。
日本橋イリー。夜は高いので入らないことにしていたのだけど、打ち合わせで疲れて、そう言えば今日はまだ一杯も飲んでいなかったなと…イリーの前で迷っていて、窓からふと覗いたら、店長さんがマシンの前にいたので入った。

予想どうりユーロは135を切ったね。
いやぁ、酷いことになりましたよ。困ったもんですね。
うん。様子がまったく見えないね。アメリカにはじまったのに今だにアメリカにしがみついている日本のドル政策はどうにもならないねぇ。ユーロの方が大変かもしれないけれど独自性があって良いよ。回復も先なんじゃないかな…。

お、ハートが綺麗。
そりゃイタリア人。喋っていても上手に入れなくちゃ。
と、言いつつ恥ずかしそうにカップのエスプレッソを見せた。
ちょっと失敗したんで入れ直したんですよ。バリスタのプライドとちゃんと美味しいエスプレッソを入れようとする気持ち。これがカフェですね。
でもエスプレッソ、喋っていて失敗した? ごめんね。入れてる時は話しかけないようにするね。


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2008/11/20

アルトー後期集成 

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中学生のお嬢さんが

打ち合わせの最中に塾からもどってきて
僕の手に持っていた本を興味深そうに眺めたので

これはフランスの詩人で思想家で、演劇人で、俳優のアルトーという人。
シュルレアリスムという運動に参加して途中でブルトンと対立して抜けんだけど、大好きな人なんですよ。シュルレアリスムって知ってる?

知らない。
そう、ベルメールという人形作家もちょっと参加してたんだけど…。
? 球体関節人形なら知ってる。この間、職業研究で四谷シモンさんのアトリエに行ったよ。
え、そうなんだ。へぇー。
この本、買えるんですか?
本屋さんで注文すれば大丈夫ですよ。今も刊行中の本ですから。でもちょっと難しいよ。
あ、大丈夫。ゆっくり読むから。面白そうだし。

打ち合わせは展覧会のことだったのだけれど、たまたま寺山さんの話がでて、昔、お願いしてアルトーの演劇をやったことがあるということから、夜想の発端や、ペヨトル工房という名前のことになり、読みかけだったアルトーの本をとりだして説明しはじめたところだった。中学生で特に知識もないのに、いきなりアルトーの本に興味を示すのは驚きだった。
しかし知識とか、自分の興味を開発するってこんなきっかけなのかもしれない。自分も大学に入学したその日に、シュルレアリスム宣言を渡されて、それを解読していくうちにこんなことになったのだから。シュルレアリスムは文化海馬にこつんとヒットする力が昔も今もあるんだろうなと思う。

夜想がそんな力をもてたらと思う。難しい、易しいじゃないんだろとつくづく思った。心の奥に響く本を作っていかないとと改めて思い知らされた。



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2008/11/19

カフェポッド NIMEX

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デザインは今一つだけど

味は美味しい。

ポッドも味がいろいろで楽しい。
合羽橋にポッドをネットより安く売っている店を見つけて
通いだした。
そこで手に入れたもの。

合羽橋はまだまだ宝庫。
秋葉原が電気街から変わってしまったのに対して
ここはまだ変わらない。
少しさびれている感もあるけれど
食に関しているだけしぶといかもしれない。

毎日、自転車で合羽橋通りを走って浅草橋に通っている。

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2008/11/12

筑紫哲也 井上陽水 川島裕二

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筑紫哲也の追悼番組思わず、じっと見てしまった。
最後は井上陽水の『最後のニュース』、君にグッドナイト。君にグッドバイ。
++
最近のスタイルの弾き語り。キーボードは最近のキーボーダー小島良喜じゃなくて川島裕二だったような…はっきりとは分らないけど。
関係していたEP-4の、そして安全地帯の隠れキーボード、そして井上陽水のアルバムのアレンジャー+プレイヤー。数多才能をもちながら何度か収監されでる度に陽水がアルバムに参加させてきた。banana(川島裕二)のために出したようなアルバムもある。筑紫哲也とのお別れに川島を連れてきたことに深い感慨を覚えた。
+++
朝日ジャーナルでバイトしていたときのエース・ライター。そしてその時、僕は田中角栄裁判の傍聴券とりの並びをした。券を渡したのは立花隆。2次試験まで通り切り札の推薦状2枚を持ちながら朝日新聞社の試験に落ちた僕は、そののち何年かして夜想を作った。その頃、筑紫哲也は朝日ジャーナルの編集長として、新人類、若者の神々というシリーズで時代をリードした。80年代僕は、その取上げられたようなクリエイターと仕事にしていた。EP-4というバンドのカセットブックやレコードを出版した。ツアーにも参加していた。川島裕二は。EP-4で信じられないほどの才能を煌めかせていた。
+++
80年代以前の朝日ジャーナルは独特のカリスマ性をもっていた。試験を受けた僕にはそれが左に片寄っているとは思えず、むしろ朝日新聞を含めた新聞の右傾化を心配していた。ジャーナリストを目指していた僕は、朝日ジャーナルしかないなと子供心に思っていた。その朝日ジャーナルの姿勢を受け継いでいるのが筑紫哲也だと思う。もちろん当時のジャーナルにとって筑紫哲也はむしろ軟弱な部類に属していたのだが、今や硬派になってしまったところに日本の地盤液状化の現象が見て取れる。最後のメッセージも癌に侵された日本への警告を投げていた。敗戦をベースにしたジャーナリストというのは、時代的にももう出てこない。戦争を体験的なことを含めて、アプリオリに悪いという感覚で語れる最後の世代になってしまった。戦争が悪いかどうかということを論じなくてはならなくなっているのだ。それは人を殺して悪いかどうかを論じなければならなくなったということと似ている。論じなければならないように時代が変わっているのに、一向に論じようとはしない。たぶん日本の液状化はもっとすすんでいくのだろうと思う。どうするのか。
筑紫哲也も言っていた、状況が分っても治療は難しい。それでも状況はきちんと把握すべきだと。

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2008/11/11

造本解剖図鑑 ミルキィ・イソベ




+
ミルキィ・イソベの『造本 解剖図鑑』。
感覚を全面に出してデザインしているのに、それぞれの造本の考えを分析できるのは凄い。意識化ということなんだろうけど…。夭逝した天才ライダー・ノリックが唯一、欠点にしていたのが意識化。なんか最下位に落ちちゃって、ガーッと頑張ったらトップまで行けたんだけど、どうやって行けたのか分らないけど…などといって師匠のレイニーさんを嘆かせていた。なぜ速かったのか、なぜ遅かったのかが分らないと、本当のトップを張ることはできない。
意識化というのは本人が行って初めて意味があるが、周囲のディレクターたちの方が良く分るから、そことコミュニケーションしながら獲得していくものだ。だけどミルキィさんの意識化は周辺のディレクター、編集者をぶっちぎって、理性的だ。本の構成そのものが意識化であり、むらがなく美しく積み上げられている。未知の領域を走っているロッシやライコネンのようだ。

++
造本を紙を中心に分析している。その紙に対する姿勢も曖昧なところがなくすっきりしている。今、紙についての作品や本が流行になっているが、大きく一線を画している。風合とかポエジーではなく、本を作るための紙に感覚が集中しているのだ。工場から出荷され本になるための紙。工業製品にいかに紙的な思いを反映できるか。そんな感じだ。

+++
帯びにも書かれているが、理性的でなおかつ感覚的なミルキィさんが使っている感性は、第六感だ。理性と感覚を合致させた上で、さらに読者に対してのジャンプをかけるべく、その延長上に何かをもってくるのだ。何かというのが第六感とか、皮膚感覚とか、内臓感覚による本の内容の受け止め物だ。合っていて翔んでいる、そんなデザインはそうしたいくつものプロセスでできあがる。

++++
トップライダーやドライバーは、突如、切れた走りをする。切れた走りというのはもちろん全周は難しい。どこで切ったらよいかということを本能でできるのがスーパーな人なのだ。切るべきところで切らないで、守り、守るところで切るという勝負センスのなさが運命を分ける。そういう意味で、『造本解剖図鑑』の著者は、業界トップの勝負師でもある。とにかく読んでみて。『ブックデザインミルキィ流』と合せて読まれるとばっちりですよ。




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2008/11/11

新大久保の人間ドッグ

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のり巻きが

美味しい。

+
新大久保近くの人間ドッグに入って、精密検査。ポリープが育っていないかちょっと不安。
++
ふらりと新大久保あたりを歩く。むかし通っていたむかしやでランチを食べるが、あれッというほど、美味しくなくなっている。こうなるとちょっと気になって、新大久保を徘徊。韓流のグッズショップが軒を並べている。オバサン達が群れをなしてお店に入って行く。でもちょっと冴えない感じ。流行にまだしがみついている?という文脈で見ると納得できる感じ。(ホントのところは分らないけど…)
+++
真ん中あたりにのり巻きの店を見つけた。明洞のり巻の店。もう入らないので、翌日、トライ。のり巻きの盛り合わせ、水餃子が美味しかった。街はどんどん変わっていく。その変化は激しい。アジア、上海のようだ。もっとも新大久保はアジアなんだけどね。


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2008/11/10

豊崎由美。

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+
自分がこれまで読んできた傾向の本と異る本を読んできた豊崎由美。さん。『正直書評。』の。がカッコ良い。姿勢が断定形。これはなかなか難しいことだ。人はそう言う。みんなそう言っているよ。自分の意見を反論されないようにして相手を苛めるそんな手法じゃない。私がこう読んだ。文句あるか。という姿勢。でもけんか腰じゃない。文学に愛がある。文字に愛がある。本に愛がある。自分が責任をもっている。だから他の人が違う見方をするのも許容する。間違っていたら謝る。

ウィキペディアの記事はちょっと重箱突きっぽい。豊崎由美が人を突くから、その豊崎はどうなのよっていう視点から書かれている。

++
頭の3行でぱっと本をとらえる。引用が上手。引用は手抜きの手法だと思っていたが、ちょっとびっくり。特に否定項に入っている、渡辺淳一、石原慎太郎の抜きが巧い。これ精読しているよね。駄目をしっかり読み込むプロ意識がこれまた凄い。
豊崎の書評から透けて見えてくるのは、作家の姿勢、作家の文学の姿勢。これはガイドとしてとても役に立つ。ネタバレされたら読み難いし。

+++
『正直書評。』
『そんなに読んで、どうするの? --縦横無尽のブックガイド』『どれだけ読めば、気がすむの?』
豊崎さんの書評集に取上げられている、読書体験がほとんど被っていない。違う道を歩いてきたんだな。ちなみに豊崎さんは批評じゃなく、書評。差をわきまえている。だから筆も立つ。
被っていないけれど、資質は『夜想』な気がする。『クラッシュ』『異形の愛』大絶賛だし。話しているとゴシック、ヴィクトリアン小説好きそうだし…。豊崎読みを完食しようかと無謀な試みをスタートした。挫折すると思うけど…。まずは『文学少女の友』千野帽子『憑かれた鏡』ゴーリー。
もっとも『夜想』に近いところから読みだしたのだけれど、2冊とも面白い。特に豊崎さんが自書でピックアップした、『憑かれた鏡』のなかのストーカーの短編、『判事の家』が秀逸。ヴァンパイア特集の時にパスしていた。うーむ。恐るべし豊崎。

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2008/11/10

Amazon yaso ヴィクトリアン

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という検索をされる方のために

Amazonはようやくヴィクトリアンの特集をアップしたけれど
たった1冊しか在庫せずに
そのまま品切れにしたので
抗議の意味をたっぷり含めて!!
願わくば、Googleでこちらの方が上になるようにと。

++
ヴィクトリアンは品切れではございません。
元気に書店で動いております。

+++
定価で購入できますので
Amazonに行かれる方はご注意下さい。


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2008/11/09

ベニサンピットが

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なくなる。


下町にあった染料工場の倉庫を改造してできたベニサンピットが閉鎖になるらしい。詳しい事情は、まだ分らないが、そう言えばベニサンピットにスタジオがある衣裳作家が、移転案内を送ってきていた。劇団桟敷童子の新作情報にも、最後のベニサンピットでとあった。
世田谷パブリックシアターに、アッカーマンの『1945』を見に行ってやはり、ベニサンピットのことを考えてしまった。

+
ベニサンピットがあって、TPTというプロデュース集団が生まれ、そしてそこからロバート・アラン・アッカーマンが率いるthe companyも出てきた。アッカーマンもベニサンピット廃業を嘆いている。(http://ameblo.jp/ackerman/)
以前のバブル崩壊で、西武百貨店のスタジオ200が閉鎖になったり、美術の大きなギャラリー、日鉱ギャラリー、佐賀町エキジビットスペース、川口現代美術館が閉鎖になったことと、それがいかに次の世代の育成を妨げたかを思いだした。
あ、そう言えば、ニナガワスタジオもベニサンピットをベースに若手を鍛えていた。芸術には、生まれる倉庫のような場所、実験的に見せる場所という懐胎場が必要で、それは相互に支え合って成立していかないと駄目なんだと思うが、経済が破綻する度に、閉鎖に追い込まれる。
++
『1945』は世田谷パブリックシアターで上演された。芥川龍之介の『藪の中』そしてそこから派生した黒沢明の『羅生門』を下敷きにした戯曲である。「真実は語る人の立場によっていかようにも変わり得る」というまさに今世界を席巻している大きな問題をテーマにしている。
大量殺戮兵器なんてなかったじゃないか!とオバマはマケインを演説で攻め立てた。なんだ知っていたんじゃないか。仕返しをする相手をアフガニスタンは大変だから、短期間で攻め落とせるシミュレーションができているイラクにした戦争。ブッシュの気分によって行われた戦争なんだから…いいかげんにしたほうが良い。ベトナム戦争と同じようなことになっている。金融危機もそうだけれど、どうしてアメリカは、そして人類は同じような過ちを繰り返すのだろう。2度目はもう失敗の構造が分っているのだからしなければよいのに。
オバマは大統領に就任した時に、イラク侵略に対する言動を一転する可能性がある。大統領選挙での言動が、アメリカの大儀にいかにすりかわっていくか見物だ。もし、間違っていたのだから、イラクにもフセインにも謝る、戦争を終結する。などともし言ったら世界は変わる。無理だろうけどね。

+++
TPT(ルヴォー)やthe company(アッカーマン)の正統派演劇の力には、いつも凄いなぁと感心するのだけれど、少しだけ、今の僕には違和感があって、その違和感は、ちょっと贅沢な望みなのかもしれないけれど、文学や芸術の正統的と言われている見方にもちょっとある。まだはっきりと意識化できていない。構造だけでは示せない何かを表現して欲しいというようなことかもしれない。『1945』も非常に良くできた戯曲で、テーマもこちらが見るべき視点も用意されている。感動もするのだけれど、何かずれがあるような気がする。
舞台を見続けながらそれが何であるかちょっと確かめたい気がする。

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2008/11/07

退化論 ノルダウ 『谷崎潤一郎と世紀末』松村 昌家編

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世界は退化期に入った?

+
夜想のヴァンパイアにもヴィクトリアンにも
キーとしてでてくるのが退化論だ。
+
ダーウィンの進化論自体が退化という概念を現実のものとしてとらえる契機になったこともあるが、ノルダウの退化論が、大きな影響を与えた。誤読されてヒットラーの頽廃芸術という考えを生んだともされている。
++
ノルダウの退化論、日本に入っては谷崎潤一郎をはじめとする明治期の作家に退廃という感覚を植えつけた。退化論を読みたいと思っていたが、古い訳が一つあるだけで、読めなかった。と、思っていたら、『谷崎潤一郎と世紀末 』に訳がのっていた。
訳は本当は『変質論』と訳すべきと…。ここでもだいぶ誤読があったかもしれない。まだまだ研究の途についたばかりだけれど、ノルダウと谷崎の関係は面白い。そしてそこに日本の小説の近代の闇の原点があることが想像できる。
+++
イギリス、ヴィクトリアン期は、日本の明治に大きな影響を与えている。とくに闇の部分に。もっと見ていくと面白いだろう。
それにしても金融危機の影響はすざまじい。世界がもう一度、退化論にみわまれることがないことを望みたい。ダーウィンもノルダウも誤読されての影響の方が大きい。誤読されやすいテーマなのだろうが、今度の世紀は知性をはたらかせたいものだ。
安全圏を走っていると思ったトヨタまで危機を表明した。F1を降りるなんて言わないだろうな。逆効果だぞ。危機にこそ姿勢が問われるのだ。嘘でも車文化が…と虚勢をはるべきだ。そこからきっと何かが生まれる。




『黄金色の死』谷崎潤一郎

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2008/11/05

肌に残る…

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肌には記憶が残る
痛い記憶も、優しい触れ合いも。

そして肌は思考する。

+
もう1歩ここから派生する妄想。
肌に、言葉も残るのでは。

++
もちろん個体差はあるだろう。記憶の残る度合いもいろいろだ。
でもハラスメントの言葉は
肌に記憶されているのではないだろうか。


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2008/11/05

倉敷意匠2

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パンチの穴を

補強する可愛いグッズ。
スタッフが手に入れてきた。
まっすぐに反応してしまう。
倉敷意匠→ロバロバという流れ。
これが関西なら
倉敷意匠→一乗寺恵文社という感じだろうか。
+
マスキングテープとポストカードで枝折を作って使っている。
最近はパンチで穴をあけて
紐も通していたりする。
早速、パンチ穴を補強した。
ううん。可愛い。
++
マスキングテープもあっという間に進化した。
+++
枝折は豊崎社長の影響が少しある。豊崎社長の最新刊は凄い。買っちゃいけない本を鉄の斧として酷評。褒めるのはやさしい(そうでもないけど…)けなすのはもっと芸がいる。
豊崎社長のけなし芸は素敵だ。




二人の対談が金曜日、bisである。
来てね。

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2008/11/04

酉の市の夜

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風邪で火照った身体を

抱えて仲見世を走っていると
酉の市の熊手。
今日の深夜からはじまる。心なしか人が少ないような気もする。

+
師走の足音がすぐ側まで来ている。
未曾有の不況がくるのかもしれない。
乱世は歓迎。
『夜想』はあくまでもインディーズだから。

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